絵本というと、とかく子供向けと扱われることが多いですよね。でも、大人にこそ読んで欲しい絵本がこっそり絵本コーナーに潜んでいたります。
秋の夜長に、心にふっと寂しさが湧いてきた時に、そっとより沿ってくれる大人の泣ける絵本、素敵ですよね。
今回は文章がなく、デッサンだけで描かれていることで、自分の中に閉じ込めていた感性の扉を開いてくれそうな通好みの絵本を取り上げてみます。
決して甘い夢物語ではありません。ラストの絵に何か感じるのかを読み手に委ねてくれている、自分と対話できる絵本。ガブリエル・バンサン著の絵本「アンジュール〜ある犬の物語」です。
『アンジュール〜ある犬の物語』
『アンジュール〜ある犬の物語』:あらすじ
おそらく、裕福な家族だったのでしょう。車で遠出した場所で、アンジュールは放り出され、取り残されてしまいます。どんなに追いかけても吠えても戻ってきてはくれない家族。途方にくれる犬。ついさっきまで人間の家族だったアンジュールは、今では人間にうとまれる野良犬として毛嫌いされます。ただたださまよう犬。さまようしかない犬。これまでの日々は幻だったかのような失望と絶望しかない現実。やがて、ひとりの人間が足を止めます。
『アンジュール〜ある犬の物語』:口コミ
たくさんの方に読まれているこの絵本。どのような方々が手に取り、そしてどのような感想を持ったのでしょうか?この本に寄せられた感想を集めてみました。
この絵本に、セリフや文字は一切ない。まさしく「絵本」なのだが、それでも十分すぎるほど、絵に伝える力がある。主人公の表情や佇まいが醸し出す空気に引き込まれる。
心が洗われる、喪失と再生の物語だと思います。ガブリエル・バンサンのデッサン力が偉観なく発揮されています。
1ページ目からショックでした(T_T)文字も色彩もないのに迫り来る…
文字がひとつもない、まさに「絵」本。でもこれだけ絵が語りかけてくるのであれば、文字など必要ないでしょう。ラフ画のようにシンプルなのに表情豊かな犬がいます。老若男女、人種や言葉も関係なく、何かを感じることができる作品だと思います。
一言の文字もないのにページをめくるたびに捨てられた犬の気持ちがヒシヒシと感じられます。
鉛筆タッチのスケッチ風な絵が続きます。なのに、ストーリーがしっかり伝わってきて、悲しくなったり、ジーンときたり。子どもから大人まで楽しめます。
わかりやす過ぎない。説明は私たちの想像力をそぎ落としてしまいがちです。あえて絵だけの「絵本」にする。説明を削ぎ落とすことで、私たちにたくさんのものを与えてくれる、そんな絵本なんですね。

『アンジュール〜ある犬の物語』:ガブリエル・バンサンってどんな人?
1928年ベルギーのブリュッセル生まれ。
美術学校で絵画を学び、以後長期にわたりデッサンに専念し、絵本作家としてデビューしたのは美術アカデミーを出てから30年ほど経った53歳でした。とにかく繊細な線画がなにより特徴的な作家です。
2000年に72歳で逝去されています。
<代表作>
こちらの2作品は共にポローニャ国際児童図書展グラフィック賞を受賞している絵本です。
たまご (ガブリエル・バンザンのえほん) [ ガブリエル・バンサン ]
セレスティーヌ アーネストとの出会い [ ガブリエル・バンサン ]
世界的に高く評価されたそのデッサン力。でも、デッサンだけではなく、その物語が本当に繊細で、時に衝撃的で、私たちに残像を残します。
さいごに
一度は手にとって見ていただきたい絵本です。繊細な線1本1本の揺らぎが、登場人物や犬に命を与えてるような気がします。止まっているように見えて、実は変化しています。まず時間が流れている。そして、時間が経ってもそこにあるということは、それだけで止まってるものなんかこの世にはないんじゃないかって思えます。この絵本に登場する犬も人も車も生きていて、生きていく中で正義と見えることと悪だと見えることがあり、でも変わらないことは常に流れる時間の中に生きているということであり、新しい出会いのために今を脱ぎ捨てざるをえないこともあるんだと、なんだかそんなことを感じてしまう、私にとっても大好きな絵本です。自分へのクリスマスプレゼントや誕生日プレゼントに、「アンジュール〜ある犬の物語」いかがですか?